Génération de roses

第16回 あなたはそれでもLCCを選びますか?

蜂谷雅彦 カマクライフ


カリフォルニア州サンノゼ空港上空より

しばらく掲載をお休みしている間に、もう夏休みも終わり。
円安が続いていたかと思えば、日銀が追加利上げをした途端あっという間に年初程度のレート(145円/米ドル)に上がった。

今年の夏休みは海外旅行に行かれた方も多いと思うが、円高、世界的インフレを理由に見送った方も多いことだろう。

そんなさなか、自分は上半期にすでに2度渡航した。一つは5月のイタリアとスイス。残りは6月のアメリカだ。アメリカは40年近く世話になっている友人のオオタニさん見たさに付き合う形で、半年以上前から計画していたものだったが、イタリアは友人の急逝によるものだった。流石に物価の高い国に続けて旅行が許される財布事情など持ち合わせていないので、誤解なきよう。

マドリード空港にて

今回の旅行で一つ気になったことがある。帰国便に日本人が極端に少ないのだ。
もちろんもちろんGW明け、7月上旬という、ある意味閑散期ではあるだろう。ただそれを考慮してもまあ乗っていないのだ。無論、現地で目にする観光客の中にも、カメラを首からぶら下げている日本人の団体の姿など、今は昔だ。円安はほぼピークだった。

世界中がオーバーツーリズム

それに代わって増加する来日観光客の数は夥しい。
地元の鎌倉は、京都同様「オーバーツーリズム」に泣かされている。

実はこの「オーバーツーリズム」は日本に限った事ではない。コロナ以降、世界中の観光地にひしめくツーリストの数は前代未聞だ。それに伴いどこのハブ空港もパンク状態。デジタル化が進んだこともあり、どのフライトも空席をさほど出すことなく飛ばしている。チェックイン、出入国も同様でスムーズであるが、問題はどうしても「ヒト」が介入しなければならない.「バッグドロップ」はどこも長蛇の列だ。LCCなど選んだ暁には地獄だ。オペレーターの数がFSC(フルサービスキャリア)に対して、圧倒的に少ないので遅々として進まない。


アムステルダム・スキポール空港で荷物を下ろしているところ


着陸後20分経つが、リスボンからの荷物が一向に出て来ない

もちろんそれを回避できる方法もある。お金を出せばいいのだ。
数千円出せばプライオリティカウンターで笑顔で受付してくれる。

前節が長くなったが、先日のマダムとのトークショーでもお話しした、LCC(ロー・コスト・キャリア/格安航空会社)を選択した場合の注意点を話してみたい。

格安航空会社はなぜ安いか?

「それは格安航空会社だから。」と言われればその通りだが、単純にあらゆるサービスが切り売りされているからである。もしくはFSC(フル・サービス・キャリア)でも提供されるサービスの質が悪いか、無いのである。

サイトでチケットを買うときに安いと思って買ってみたら、預ける荷物いくら、機内持ち込みいくら、機内食いくら、ブランケットいくら、とそれぞれ別料金だ。必要なものだけ選んでまとめてみると、FSCの値段と変わらないか、それよりも高いということがよくあるのでご注意。挙げ句の果てにこれでOKと座席を選ぼうとすると追加料金無しで選べる席が3人掛けの真ん中だけなんてこともよくある。


LCCの機内食は全て別料金

もし、LCCとFSCを比較して、料金に遜色ないか差額が強要範囲なら、FSCの選択を推奨する。

それは起きがちな問題、欠航、遅延、ロストラゲージに関するサービスの質がまるっきり違うからだ。LCCはそれに対するサービスカウンターが現地で見当たらず、HPのカスタマーサービスとのチャットもしくはメールで解決しなくてはいけないことがほとんどだ。

異国の地で不安な状態な上に、時差もあり疲労感満載、その上貴重な旅行の時間を事故対応で割かれるなど悪夢でしか無いだろう。

もし旅慣れていない方、現地で外国語で交渉する面倒を避けたい方は、保険に入ったと思って、FSCを選んだ方が無難だろう。

前回のアメリカ旅行はLCCを利用した際、不味そうな機内食(ハヤシライスセット1800円)を帰国便用に予約した。行きは成田空港で寿司の折り詰めを買うことができるが、LAの空港で不味いサンドイッチを買って乗り込みたくなかったからだ。多少高いがしょうがない。

LAからの帰国当日、朝ごはんを食べてなかったので、空港でフランスの会社が経営するデリ屋があったので、そこでクロックムッシュと水一本、パンオショコラ、カプチーノを買った。合計金額は32ドル、日本円換算で約5000円だった。味の心配の前に懐の心配が必要だった。

機上で提供された生ぬるいハヤシライスは、案の定想定内の味だった。

人のサービスと快適さは全部お金で買う時代。
日本はようやくインフレ基調に乗ってきたが、他国は過去ずっとインフレでここにきてさらに加速している状況。90年初頭世界一物価が高かった東京は、安く行ける旅行先として人気を博している。

日本人も外貨稼ぎに出稼ぎしなくてはいけない時代がやってきたとは、バブル期を経験した我々には現実味を未だ憶えない。ぼんやりと過去30年過ごしたあなた、「日本がアジアで一番.裕福」なんて時代はとっくに終わってるのでよろしく。


エアーヨーロッパ航空、マドリードのターミナル間の距離が6、5km

あ、LCCの搭乗ゲート、とっても遠いですよ!

Author 蜂谷 雅彦(Masahiko Hachiya)
大人のためのコンフォート、ジェンダレス、エイジレスな服を提案する「HACHIYA」デザイナー。
アパレル駐在員として長くイタリアに在住し、帰国後はグッチをはじめとするハイブランドのマーチャンダイジングを手がける。
現在は、デザイナー、ライフスタイルコンサルタントとして活躍しつつ、海を望む鎌倉の家から、サバーバンライフを発信中。

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